マジメに考察

「脳痙攣」イシューについて、マジメに考える。

本日まもなく、MLBナショナルリーグの優勝決定シリーズ第6戦が行われます。           ここまでドジャースはメッツに対して3勝2敗、大手をかけており、しかもホームゲームでの試合です。本日勝てば、ナリーグのチャンピオンシップを獲得し、ヤンキースとのワールドシリーズに臨む権利を得ます。仮に敗れても、もう1戦ホームでの試合となるのでドジャースはメッツよりも若干有利な立場にある、と言えるでしょう。                    いずれにしても両チームとも死闘覚悟のゲームになると思われるので、本日のゲームがヤマであることは確かです。                                前回の第5戦、ドジャースは6−12でメッツに敗れています。そのゲームでドジャース監督であるデイヴロバーツ監督の発言が国内ニュースで大きく取り上げられ炎上しました。   それは大谷翔平選手に対して1回のプレーによる、例の「脳痙攣」発言です。      この発言はあくまで日本国内でのみ、問題とされたのかと思い調べてみましたが、アメリカ国内でも取り上げた主要メディアもあり、ちょっとした物議をかもしています。

この問題については、すでに多くの国内外メディアも報道しているので、色んな意見がすでに出ています。ただ、個人的にはあのプレーが是か非かの前に、思うところがありました。

まず「脳痙攣」という言葉はロバーツ監督発言の[brain cramp]を直訳したものです。脳が「痙攣」と聞くと、かなり仰々しくなりますが、ニュアンス的には大谷選手が『困惑』や『思考が一時的に低下した』というような意味であり、国内で報道されているほど強い批判を大谷選手にはしていないのではないか、と推測しています。              

ちなみにですが丁度、日本在住のアイルランド人の友達と話す機会があり、シチュエーションを説明した後に「あんな場面で、brain crampっていう表現をするの?」と聞いてみました。                                        彼の返答は、「あまりそういう表現は使わないね・・・用いるなら、confused(混乱した)じゃない?アメリカ英語だからオレもよく分からないけどね」でした。

実際にゲーム中にロバーツ監督が発言したインタビューとゲーム後にそのことを問われたものも見てみましたが、ある意味淡々として感情が抑制されているようでした。

ただ、私は監督である者があのようなことをメディアに向かって発言することが疑問に思えました。大谷選手だけでなく、打ち込まれてしまったフラーティ投手に対してのロバーツ監督のコメントも残念でした。それは自己保身と受け取られても仕方のないものでしたし、実際多くのファンが怒りのコメントを出しています。                      

野球に限ったことではないのですが、個人的にはチームのリーダーや組織の最高責任者は、配下の者を守るべきだと思います。また信じてあげることも責務のように感じます。メディアから自チームの選手が戦犯扱いされたり、批判にさらされた時こそマネージメント力を発揮すべきではないでしょうか。                        

もしロバーツ監督が大谷選手のプレーがミスだと思ったのであれば、メディアに発言する前になぜ大谷選手が走らなかったのか、本人から理由を聞くべきでした。あのような発言をすれば、メディアを通じて、選手が悪者になってしまうことは明らかです。                      それは選手を守るべき立場の人間がすることだとは思えません。                 そもそもロバーツ監督は、大谷選手の目の前で「君はbrain crampになっていたな」と言えるでしょうか?推測するしかありませんが、そんなことは本人の前では言えないと思います。                                       この件からアメリカメディアが来季のロバーツ監督の契約問題まで言及するニュースにまで広げた理由は、やはり大谷選手に対してフェアなコメントではない、と感じたからでしょう。

もしあのような場面で大谷選手が走るべきだと考えるのであれば、ゲーム前に決まり事として大谷選手や他の足の速い選手にも話をしておくべきでした。                それを怠ったのはコーチ、ひいては監督のミスであり、責任でもあります。

少し話が逸れますが、私はスポーツ経験者であり指導者の経験もあります。自分が指導者になる時に、大学のコーチから「指導者は目立ってはいけない、選手が勝利した時は選手のおかげ、敗れた時は指導者のせいであることを徹底しなさい」と教わりました。      

つまりは選手ファーストでいなさい、ということです。自分の役目は選手を強くすることであり、それができない場合の全ての責任は指導者にある、と解釈しました。プレーするのが選手なら、マネージメントするのは監督やコーチです。                 どちらもプロで各々が「責任」の定義を持っているのなら、監督・コーチは選手がプレーする環境をしっかり整えてあげなくてはいけません。

そんなこともあり、今回のロバーツ監督の発言やリーダーとしての資質に、私は疑問を持たざるを得なくなりました。レギュラーシーズンでは選手への批判をあまり聞いてこなかっただけに、このような大事な場面でメディアを通じ、チームに全く利益とならない発言をした事実がとても残念でした。

それとこれはドジャースに限った話ではありませんが、短期決戦で1点の重みは分かっているはずなのに、無死2塁3塁で犠牲フライすら打とうとしない戦略に批判が起きないのも日本人としては不思議な感覚です。どうしてあんな絶好の得点機にブンブン振らせるんでしょうか・・・。                   

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話はまた逸れますが、今回のこの「脳痙攣」コメントで私は日本人として、野球以外の面で少し考えてしまった事があります。                         それはアメリカ人の[I’m sorry]と言えない・言わない点が今回のようなケースに少なからず関係しているのではないか、というものです。                       蛇足ながら私は海外生活経験者なのですが、特に英語を母国語とした人達からは日本人のように「ごめんなさい」を聞く事が出来ません。明らかに当人のミスであるにも関わらず、謝罪出来ない、しない文化があるので、必然的に自分の非を認めず、他責思考になりがちです。                                       例えば今回のケースに当てはめると、そもそもロバーツ監督はフラーティ投手が不調であることをゲーム前に知っていながら、またゲーム中でも失点を続けているのに続投させました。明らかにそれは監督の判断ミスでした。それをメディアに問われた際も「負けている状態で残りイニングをリリーフ投手でカバーできなかった」「リリーフ陣を不用意に起用したくなかった」ようなコメントを残していますが、これは第三者からすれば言い訳にしか聞こえません。リードされても選手を信じて第5戦で決め切る覚悟があれば、選手を交代することも出来たと思います。事実、結果的にあの日、打線は6点を取っていますし打線を信じて、ブルペン投手を投入していれば勝つチャンスは十分にありました。たらればですし、ゲームは終了したので今更の議論に意味はありませんが、これでは早々にゲームを捨てた、消化試合にしてしまったと批判されても仕方ありません。           

自分のミスを潔く認める、という態度もリーダーとしては大切な資質であるのだ、と教わったような気がしました。   

ムーキーベッツ選手は地元のラジオ局でこの「脳痙攣」イシューをインタビューされた際、「(大谷選手とロバーツ監督のどちらの考え方も理解できる、と述べた後)それはもう終わったことで、我々がやるべきことは明日の試合に勝つこと、自分たちの仕事をやるだけで後ろを見ることじゃない。間違えてたら正すというだけだ」と答えたそうです。監督以上にリーダーらしいコメントなのではないでしょうか。                    優勝決定シリーズに入ってからのベッツ選手の躍動ぶりは説明不要ですが、こういう選手がいるチームはやはり強いのだと思います。

第6戦、あるかどうかは分かりませんが第7戦まで素晴らしい戦いが見れることを楽しみにしております。

大谷〜打ってくれ〜!!

では皆様も良い1日を。ありがとうございました。

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